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 より自然な2足歩行機の実現


 人間型のロボットを創るための重要技術が2足直立歩行.様々なロボットが存在するが,やはりどこか歩行はぎこちない.ということで,「もっと,人間らしく歩かせよ!」というのが研究目標.そもそも,人間は簡単に歩いているが,どういうメカニズムで歩いているのかとても興味のあるところ.この研究では,より人間に近い2足歩行機を実現できれば,人間がどういうメカニズムで歩行を行っているのか間接的に理解できるはず(構成論的アプローチ)と考えている. 研究室ではこれまでに,準受動歩行機PBEmuシリーズによりさまざまな2足歩行を実現してきた.


2足歩行ロボットPBEmu-IV

膝の伸縮と胴体の姿勢制御による2足歩行と周波数応答解析, 衣笠哲也, 大須賀公一,三輪正一, 日本ロボット学会誌, 第25巻, 第3号, pp.440-447, 2007

 さらに,3次元受動歩行機RW00〜03を用いて様々な条件下での歩行実験を行うと共に,Matlab等を用いた歩行機シミュレータを構築し,さまざまな解析を行っている. 当面の課題は,試行錯誤的に創られる受動歩行機をどうやったらシステマティックに設計できるのか明らかにすること.


3次元受動歩行機Ridai Passive Walker 弐号機(RW02)

バネ足首と扁平足による3次元受動歩行機, 衣笠哲也,吉田浩治,小武健一, 藤村明, 田中浩毅, 小川浩平, 日本ロボット学会誌, 第27巻, 第10号, pp.1169-1172, 2009

 この受動的歩行の研究を始めたT.McGeerはこんなことをいっています.
「飛行機の開発は,グライダーの研究から始まった.まず,効果的で安定なグライダーの設計方法があきらかにされ,その後,速度や方向を変化させる制御手法が開発された.そして最後には動力飛行が発明され,水平飛行や上昇が可能となった.我々はこれと同じアプローチで歩行の研究を行う」.

 現在世界中でこの2足歩行グライダーである受動的歩行の研究が行われています. 受動歩行メカニズムに基づく歩行は残念ながらまだ地面の凹凸などの環境変化には弱いといった問題が残されています.でも,近い将来,前述した従来方法などと組み合わされ ることでより自然で自由に歩き回ることができるロボットを実現できるようになるでしょう.

2本の足で歩くことは,人が人になることができた,とても重要な能力だと考えられています.これは人間が持つ移動に関する知能といい換えてもいいでしょう.はじめにも述べましたが,より自然な 2足歩行をロボットが実現できれば,直接人間を調べることなく,そのメカニズムや知能を理解できるはずだと我々は考えています.「人間を間接的に理解する」これが我々の学術的興味です.

 将来的にはヒューマノイドそのものが「使える」ようになることもそうですが,2本の足で歩くメカニズムが実現すれば,歩行に関する障害を持つ人のリハビリ技術の発展 歩行機能をもつ義足の実現,といった方向で世の中の役に立つことが期待できます.

高校生をはじめ,ロボットに興味がある皆さん.
皆さんも,我々の大学でより自然な2足歩行ロボットを創ってみませんか?